雑事~ざつごと~

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SEEN-1.5 「属性、ケントウ」

 昨日の夜のことなんて何でもなかったかのように、凛は学校にていつものように優等生然としていて、昨日の夜のことなんて何も考えてないかのように、士郎は一成に頼まれてストーブを直していた。早朝からのストーブ修理も終わり、そろそろ士郎が教室に帰ろうとした際、たまたま凛と顔を合わせ昨日の事に礼を言い、凛は昨日も言ったように借りを返しただけだから、と猫を何匹か被ったまま返し、その場を去っていった。
 凛は内心、歯痒かった。朝に牛乳を飲んでやっと目を覚ました際に、白い少女が言った言葉を思い出したのだ。会話のログを残しておくチャット・ウィンドウを出して内容を見ると、少女の言葉は聞こえなかったが、ログ収集のギリギリに引っかかっていた為、少女の声はチャットのログに刻み込まれた。「早く召喚しないと本当に死んじゃうよ?」というその言葉が。
 つまりは、衛宮士郎も参加者の一人なのか? と聞くタイミングを逃したせいで、気分が悪かったのだ。まるで目を完全に覚ますのに数ミリリットルほど牛乳が足りなかった時のような感覚に苛立ちを覚えつつ、剥がれて行きそうになる猫をしっかりと捕まえたまま午前の授業を終えた彼女は、どこか近寄りがたい雰囲気を滲ませていた。

 士郎は放課後の一時間ほど重症のストーブを直してから帰宅し、しっかりと手を洗ってから料理を作り始める。大き目に切った野菜と鶏肉を大鍋で炒めてから出汁を良く染み込ませてしょうゆを少なめにした煮物にし、煮物であまった鶏肉と野菜を一緒に蒸したもので温野菜のサラダを作った。後は程よく漬かったぬか漬けと味噌汁でも作れば良いと士郎は一つ息を吐き、無作法ながらテーブルに肘をついて手のひらで頬を押す。
 そして士郎は一度だけ息を吐くと、ヴャーチャル・ギアを取り出して世界を越えた。
 夕日が向こうでわずかに燃えているのが判るぐらいの時間、士郎は精巧に創られた世界へ入りこみ、いつもは夜にしかやらない魔術の鍛錬をするために土蔵に入った。暗く閉じた土蔵の空気は扉を空けると冷たく流れ出て士郎の体を撫で、かすかに背筋を震わせる。士郎は冷たく濁った空気の充満する土蔵に入り、いつもよりも明るいのに同じ感覚に奇妙な思いをしながら鉄パイプを一つ手に取った。
 士郎は背骨に灼けた鉄の棒を突き刺し、擬似神経を作って魔力を作り、鉄パイプに浸透させていく。流れ出した魔力は鉄パイプの弱い部分を満たし、しっかりと強化が成功した。
 士郎は初回に成功した強化の魔術に達成感と興奮を覚えつつ木材を手に取り、同じように魔力を浸透させていく。今度は呆気ないほど簡単にひびが入り、木材は使い物にならなくなった。士郎はそう簡単にいくわけが無いか、と苦笑しつつ今度は木刀を手にとって魔力を流し込んだ。それは成功し、士郎は確実に上がっている強化の成功率に先ほどよりも強い興奮を覚え、土蔵にある様々なもので強化を試した。
 頭部が破損したカーネル・サンダース人形は失敗し、ソフト・ビニールで出来た刀のおもちゃは成功した。鉄パイプはその後二本が失敗して一本が成功、木材は二本が失敗で二本成功、木刀は一本が失敗して二本が成功し、竹光の刀が三本全て成功した。この実験で大河が持ってきたガラクタの六分の一ほどを消費したが、士郎なりに出た結論は、剣の形をした物の方が成功しやすいということだった。
 士郎は魔力を枯渇寸前まで使って体中を汗まみれにし、白い息を量産しつつ大の字で寝転がった。そのまま呼吸が通常運営になるまで待つと、士郎は自分の部屋に入ってログ・アウトした。

 間桐桜は衛宮家で士郎たちと一緒に食事をして帰ると、自分の部屋に閉じ篭ってヴァーチャル・ギアを被った。暗い陰気な間桐家の中で安息を得るために、桜はマーブル・ファンタズムを使う。マーブル・ファンタズム内での彼女の名前は、遠坂桜と言った。
 まるでモデル・ハウスのように生活感の薄い、寝る事と着替える為だけにある間桐家の一室から彼女は、同じように広い洋室だがぬいぐるみや小物などの置いてある生活感のある一室に跳躍した。そこは、もしそのまま桜が養子に出されず育っていたならば与えられていただろう部屋である。クローゼットやタンス、ベッドの類いは無駄な装飾が一切無く、質素とも機能的とも言えるが、小物類を置いてあることからみると、彼女の趣味と言うよりも家族の趣味なのかもしれない。
 桜は自分の部屋で安堵したように深く呼吸すると、部屋を出てキッチンで紅茶を淹れる。ティ・カップを食器棚から出して沸いたお湯を勢い注ぎ、まだたっぷりとあるお湯を抽出用ポットに注いでから温まるまで待ち、一度お湯を捨てて茶葉を入れてまだ沸騰していそうな熱さのお湯を注ぎ、十分に蒸らしてから茶漉しを使ってサーブ用のポットに移し、ティ・カップに湯気を立てる紅茶を注ぐ。十分立った香りを桜は楽しんでから、音を立てずにティ・カップを傾ける。
 そこに今しがた「跳んできた」凛が現われ、「わたしにもちょうだい」とサーブ用ポットからティ・カップに紅茶を乱暴なほど勢い良く注ぎ、口を付けた。そして、実に渋い顔をしたのは、紅茶が彼女があまり好きではないアールグレイだったからだろう。桜は好きなのだが、彼女はアールグレイよりもアッサムやダージリンを好んでいる。
 凛は暖めた牛乳をたっぷりと注いでからスプーンで掻き回し、眉間にしわを寄せつつミルク・ティを飲む。
「なんか、今日は苛立ってるんですね、姉さん」
「まあね。普段の演技がこれほど邪魔になるなんて思わなかった、ってだけよ」
 濃く淹れ過ぎたコーヒーを飲むみたいに凛は紅茶を飲み干してから、「ごちそうさま」とティ・カップを水で濯いで出かける準備をする。ポケットに宝石を突っ込んだ赤いハーフ・コートを身に纏い、防寒と防戦対策は万全にしてある。
「帰ってきたら洗うから。じゃ、行って来るわ」
「いってらっしゃい、姉さん」
 桜は温くなったアールグレイ・ティを飲み干し、姉の分もティ・カップを洗った。
 これからマーブル・ファンタズムの夜が始まる。
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  1. 1970/01/04(日) 14:00:00|
  2. marble phantasm
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